2021年5月2日日曜日

岩田健母と子のミュージアムより #おうちでバリミュ

岩田健母と子のミュージアムのエントランスを抜けると、彫刻庭園のような空間にのびのびと過ごす彫像たちが来館者を迎えてくれます。 「母と子」を主題に、母と子が顔を見合わせて微笑み合っている像や、目を輝かせてこちらに何か話しかけているような少女の像、空を見上げる母子の像など、44点の作品が収蔵されています。
なぜ、岩田先生は、母子像や子供の作品を制作されたのか。 それは戦争により、多くの母親が受けた悲しみを戦争を知らない世代に伝えたいと思ったからです。 ご自身も戦争を体験し、お兄さんを亡くしました。 お兄さんの戦死を知った時の涙を流さずとも深い悲しみを堪える母親の姿が忘れられないと言います。 何気ない日常の中にある多くの幸せなひと時を忘れてはいけない、と思わされます。 岩田ミュージアムは作品を説明するのはタイトルのみで、キャプションは最小限に抑えているのは、見る人それぞれが持っている母や子への想いや記憶と重ねてほしいと岩田先生が思っているからだと、私は思っています。 作品を「彼ら」と呼ぶ岩田先生。作品はご自身の想いを宿した分身なのかもしれません。 岩田先生の様々な人生経験を経て生み出された作品たちは、岩田先生の想いを継ぎ、お母さまやお兄様と過ごした掛け替えのない時間の記憶の一端を作品に投影した存在なのだと思います。 ぜひ、じっくり作品と向き合っていただき、一つ一つの作品にある物語を想像してみてください。
そして岩田ミュージアムには、建築の楽しみ方もありますよ! 設計は建築家の伊東豊雄さんです。岩田先生の「自分の作品は自然の中に置きたい」との希望から、伊東さんはミュージアムのコンセプトで桜の木の下に幔幕を張り、人々が過ごす様子をスケッチにしました。幕を張るだけで特別な空間になるのが一つの理想の建築と語る伊東さんは、岩田ミュージアムにそのイメージを反映させました。
完成した建築は壁を円形にまわし、庇があるだけのとてもシンプルな建築です。 特徴的な半屋外の空間からは、周りの山々や空、木造校舎の屋根が切り取られるように見ることができ、鳥の声や波の音、気持ちの良い風を感じることができます。 芝生やベンチに腰を掛けながら、彫像と一緒に過ごしていると、とても心地よいです。 この建築が自然と調和しながら、岩田先生の世界観を護っているのだと思います。 そんな見どころ、過ごしどころが満載な岩田健母と子のミュージアム。 現在、コロナウイルス感染拡大防止のため臨時休館となりますが、ミュージアムが再開されましたら、どうぞ穏やかなひと時を感じにいらしてください。 ※作品の写真撮影はご遠慮ください。